BNBとは?バイナンス日本進出で価格はどうなる?

島田 理貴

ヤフーグループとバイナンスが提携を発表

今月17日に、Zコーポレーション株式会社、TaoTao株式会社、Binance Holdings Ltdの3社が日本市場における戦略的提携に関する交渉を開始したことが発表された

Binance(バイナンス)は世界でも有数の暗号資産取引所で、アルトコインを数多くとり揃える他、先物取引なども積極的に提供し、設立からわずか半年でユニコーン企業に仲間いりした。

近年、グローバル展開に注力しており、2018年9月にCoinDesk(コインデスク)主催のイベントに出席した創設者兼CEOのZhao Changpeng(チャオ・チャンペン)氏は、ほぼすべての大陸で暗号資産取引所のサービスを提供する予定であることを明かしていた

また、昨年11月にインドに拠点を置く暗号資産取引所・WazirX(ワジールエックス)を買収した他、翌月には南米向けに暗号資産決済ネットワークを提供するSettle Network(セトル・ネットワーク)と提携して、フィアット通貨と暗号資産の交換プラットフォームをローンチするなど、Binanceのグローバル展開の勢いは凄まじい。

他方のZコーポレーション株式会社は、Zホールディングス株式会社(昨年10月にヤフー株式会社から社名変更)の完全子会社として設立された投資会社であり、また、暗号資産情報メディアのCoinDesk Japanを運営するN.Avenue株式会社の親会社でもある。

もう一方のTaoTao株式会社は、国内暗号資産取引所TAOTAO(タオタオ)の運営会社。暗号資産交換業者の株式会社ビットアルゴ取引所東京を母体とし、筆頭株主はZホールディングス株式会社が単独出資するZファンド1号投資事業有限責任組合である。

バイナンスは日本に進出する?バイナンスUSやフォビの前例


これら3社の狙いは、Binanceの国内進出であるとかんがえて、ほぼ間違いない。

というのも、Binanceは上記の発表の前日に、日本居住者へのサービス提供を段階的に終了することを発表していたが、こういった、ユーザーを締めだしてから当該地域への正式な進出を発表するパターンが今回だけのことではないからである。

昨年6月に同様の措置を米国ユーザー向けに発表したBinanceは、その直後、米国向けの取引所であるBinance USの新設を発表している。おなじ時期に、取引所大手のHuobi(フォビ)も、日本居住者のサービス終了を発表したのち、11月に国内取引所のBitTrade(ビットトレード)をHuobiとしてリブランディングした。

さらに、Binanceは、昨年12月より各種求人サイトにて日本現地の法律問題にくわしい「リーガルカウンセル職」の募集を掲載しており、このことも国内進出という説を支持しているだろう。

BNBとは?BNBの価格はどうなる?


さて、気になるのはBinanceが発行するBinance coin(バイナンス・コイン / BNB)の価格の行方である。

そもそも、BNBとは2017年6月に実施されたICOでローンチされたERC20準拠のトークンである。ユーティリティトークンとしての側面をもち、Binanceでの取引における取引手数料の支払いや、IEOなどで利用できる。人気を集める要因は、BNBによって取引手数料を支払う場合に、取引手数料が割り引かれるサービス(期間限定)と四半期ごとに実施されるバーン(供給量減少)である。

ただし、同様のサービスや方針を提示するトークンは数多く存在しており、BNBが人気である本質的な要因は、Binanceのユーザー数や取引ボリュームに起因するだろう。

さて、価格についてだが、CoinMarketCap(コインマーケットキャップ)のデータによると、17日14時までに直近30日で最高の18.2USDをつけており、本稿の執筆中も上昇トレンドはつづいている。

しかし、この値動きが国内進出による思惑買い主導のものかどうかは不明である。BNBとおなじく取引所が発行するHuobi Token(フォビ・トークン / HT)も同様の値動きをみせる他、Bitcoin(ビットコイン / BTC)やEthereum(イーサリアム / ETH)といった主要コインもおなじく上昇トレンドにあり、思惑買いの影響は軽微であるようにもみえる。

以前にHuobiがBitTradeのリブランディングを発表した際には、比較的移行期間が長かったこともあり、HTの価格変動は比較的穏やかであった。だが、Binance USが発表された際には、IEOの盛況や分散型取引所(DEX)の提供開始といった材料もあって、上場以来の最高値である39.57USDをつけており、今回の発表についても、他の好材料とくみあわさった場合には一気に上昇につながるポテンシャルをもっているといえる。

逆に、今後開設されるであろう国内取引所の情報が順次公開されていくにつれ、それが投資家にとって魅力的でない取引所であったならば、下落トレンドにはいる可能性も十二分にある。

BNBの価格につながる今後注目の動向 1:Binanceのグローバル展開


注目しておきたい動向は、Binanceのグローバル展開と、Zホールディングスグループのブロックチェーン・暗号資産領域における活動、そして国内法規制の行方である。

取引所が発行するコインは、保有や使用による取引手数料の割引や、アフィリエイト報酬、運営によるバーンなど、疑似的に株主配当のような機能を備えている。したがって、その利益配分という意味では、比較的証券に近い性質をもっているといえ、ファンダメンタルもみえやすい。

ゆえに、BNBの場合には取引所間におけるBinanceの地位や期待、安全性などの評価が重要になる。今回の発表を意欲的なグローバル展開への動きとみるか、国内規制によるサービス改悪への動きとみるかで、今後着目すべき材料も変化するだろうが、少なくともBinance USは順調に業績を伸ばしており、日本進出もこれにつづくものとしてみることができるため、さらなるBinanceの躍進を見据えて、グローバル展開の動向を追うことには一理があるはずだ。

BNBの価格につながる今後注目の動向 2:ZHDとLINEの統合プロセス


また、Zホールディングスグループの動向にも注意を払っておくべきだろう。LINEとのスピード統合という衝撃的なニュースもあった。LINEは以前よりブロックチェーン事業において、国内規制に躓いており、近い将来、両グループ共同でブロックチェーン・暗号資産事業を展開する可能性は十二分にある。統合プロセスの完了は今年10月とされているが、それまでにTAOTAO、Binance、そしてLINEが運営するBITMAXという3つの取引所がいかなる関係性を築くに至るか、要注意である。

BNBの価格につながる今後注目の動向 3:国内レバレッジ規制


国内規制については、とくにレバレッジの問題が大きい。2018年頃から暗号資産のレバレッジ取引における最大倍率規制への動きが活発になりつつあり、現在は、自主規制団体によって4倍という制限がかけられている。しかし、2020年になって金融庁を中心に上限2倍への動きが加速している。

Binanceは昨年10月より最大倍率を125倍に引き上げており、日本居住者でレバレッジ取引を利用するBinanceユーザーの、締めだしに対する不満は必至だろう。Binanceのレバレッジ取引において、国内ユーザーがどれほどボリュームを握っているのか定かではないが、国内ユーザーの締めだし、国内規制準拠による最大倍率の制限によってBNBの流動性が低下する可能性も否めない。

現在、業界団体を中心にレバレッジ規制に関するロビイング活動もはじまっており、今後の動向が注目される。

ともあれ、Binanceという暗号資産業界の「ドン」が国内に進出するというニュースは、おそらく国内暗号資産業界にとって喜ばしいものではないか。たしかにこれによってパイの奪い合いは激化するかもしれないが、正直なところ胡散臭い取引所が多いのも事実であり、そういった取引所が淘汰され、より健全な競争が行われるというのなら、ユーザーは歓迎するだろうし、規制のあり方にもいくらかの影響が期待される。暗号資産取引がより健全化することを切に願おう。

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