仮想通貨市場動向:フェイクニュースで大幅下落も、新興国からの資金流入と商品拡大期待で復調へ

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  • 昨日、近時安定的に上昇していたビットコイン等の仮想通貨市場が急落した。背景は、ゴールドマンサックスが関連事業の検討を止めるとのフェイクニュースと大口の売りとみられる。
  • こうした動きはあるものの、最近はハッキング事件も沈静化し、市場はやや落ち着きを見せている。新興国市場からの資金流入や、一部地域での利用拡大が海外市場を下支えしている。
  • 日本では個人投資家の取引に勢いがないが、米国では機関投資家も市場に参画し、市場を支えている。NYSE関連会社の市場参入やETFの上場承認待ち等で市場回復への期待も根強く、底堅い値動きが期待される。但し、引き続き、セキュリティ面の改善などが大きな課題。

最近の仮想通貨市場

図表1の通り、6月10日の仮想通貨交換業者Coinrail(韓国)のハッキング事件以降、仮想通貨市場は6000~8000強のレンジで比較的安定的に取引されていた。

そのような中、9/6(日本時間)に久々に仮想通貨市場に動揺が走った。ビットコイン価格は、一時前日比10%前後下落、6400ドルを割り込んだ。これは、米ゴールドマンサックス(GS)が、トレーディングデスク設置を取りやめたとのニュースが流れたことによる。これに伴い、大口の売りがみられ、これに小口の投資家が追随した。

その後、GSのCFOはこのニュースを“フェイクニュース”であると強く否定した。むしろ、顧客のニーズがあることから、NDF(ノン-デリバラブル・フォワード)などの仮想通貨デリバティブ商品を開発中であるとコメントした。

米国での仮想通貨取引は底堅い:ETF申請、取引所の進出の動きも

このように、日本では、一時期の個人投資家の熱狂が冷めている仮想通貨市場だが、米国では機関投資家を巻き込み、コンスタントに取引されている(図表2)。

背景の一つとして、米SECの仮想通貨ETF上場認可への期待がある。既に、非上場で類似商品の取引が行われているが、更に、流動性や価格評価等の審査を通過すれば、9月中にも結論が出るとされている。

また、実際の取引の拡大にも期待が寄せられている。米国のICE(ニューヨーク証券取引所の親会社)が、8月に、スターバックスなどの小売業者や大手投資家とともにBakktという仮想通貨の決済プラットフォーム立ち上げを発表した。これにより、仮想通貨で簡単にモノが買えるようになることが期待されている。

新興国通貨からの流入も下支え

更に、先月後半からは、トルコリラから仮想通貨への資金流入の動きも活発化している(図表3-1)。南アランドからの流入はさほどではないが、9月初旬の取引量は8月の平均に対して3~4割増加している(図表3-2)。欧州危機の時のキプロスと同様、自国通貨の暴落時に、一部の国民が代替通貨として仮想通貨を購入する動きがあったようだ。新興国通貨が暴落した場合、新たな代替資産として仮想通貨への投資が盛り上がる可能性が高い。

その他の小国でも局所的に活用広がる

また、既存の仮想通貨投資以外に、政府や一部地域での新コインの発行・活用の動きも出ている(図表4)。

最も古くからデジタル通貨の研究に取り組んでいる国の一つが、スウェーデンである。そもそもキャッシュレス化が進んでいる国でもあり、政府によるデジタル通貨発行という発想が最もなじみやすい。しかしまだ技術的な問題などクリアすべき点も多い模様だ。同国は今年末までにこの計画を進めるかどうかを決定するとしている。

また、ベネズエラでは、独自の仮想通貨ペトロを8月のデノミ後の法定通貨ソブリン・ボリバルに連動させると発表している。ペトロは、その名の通り、原油をバックにしているとされているが、その存在量も通貨発行量も明らかになっていない。

一方、イタリア・ナポリ市では、市長が、ナポリ市独自のデジタル通貨を発行し、流通させると宣言している。それ以外にも、インフレや景気低迷に悩む多くの地域での活用が活発化しつつある。

また、日本では殆ど目にしないが、仮想通貨の出し入れができるATMも増加している(図表5)。9/7時点の世界のビットコインATMの台数は3,706台で、うち日本には12台設置されている。

当面の見通し:新興国通貨からの資金流入や市場拡大で取引活発化も

ハッキング被害の前後を除くと、ビットコインの価格はドルやVIX指数と総じて逆相関の関係にあり(図表6-1,6-2)、ドルや株式等、または新興国通貨の代替投資先になっている可能性がある。

こうした背景から、今後の仮想通貨の価格上昇には、1)新興国通貨の動揺による資金流入、2)米国でETFの上場承認、3)さまざまな形での利用拡大 ――などがカギになるだろう。ハッキング等の事故がない限り、今回のGS騒動での下げは一旦取り戻すと考える。

一方、引き続きセキュリティが大きな課題である。再度大規模なハッキング事件が発生すれば、10%を超える下落は必至である。一部の大手金融機関がカストディ(保管)業務を行うなどの報道もあるが、まだデファクトスタンダードの確立には至っていない。不正防止に向け秘密鍵管理手法等も進化しているが、システムの脆弱性等は未解決である。保管体制の確立や、一層の不正防止技術の進展が待たれる。

執筆者:大槻奈那

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