Crypto Potatoは2月16日、ブロックチェーンを活用した「仮想不動産」の総取引量が一週間で94万USD(執筆時のレートで1億円相当)を超えたと報じた。
この額はNFTマーケット情報を収集するポータルサイトNonFungibleが掲載する「過去7日間における総取引量ランキング」のうち、「仮想不動産」取引が可能なDappsゲームの上位3つ(Decentraland、The Sandbox、Cryptovoxels)の総取引額を合計したもの。したがって、この数字にはNFTのセカンダリーマーケット取引も含まれている。
仮想不動産とは?
「仮想不動産」とは、ブロックチェーンを活用して、ゲームなどの仮想空間内における「土地」をNFT化(デジタルデータに代替不可能性=唯一性を付与すること)したもののことである。
たとえば、世界中で人気を博しているものづくりゲームMinecraft(マインクラフト)では、ゲーム内でどれだけ素晴らしい建築物をつくったとしても、それ自体に資産価値はない。
マインクラフトをつうじて生計の一部を立てている人も存在するが、彼らはプレイヤーとしてのスキルや配信者としての魅力によって稼いでいるのであって、彼らがつくった建築物やワールド(仮想空間)それ自体に資産価値があるわけではない。
それらに資産価値が見いだされないのは、それらが「複製・改ざん可能な」デジタルデータだからである。だが、NFT化された「仮想不動産」は、複製も改ざんもできないデジタルデータである。そのため、それらは一般的な不動産と同様に、資産価値をもつことができるのである。
Dapps版マイクラ「Decentraland、The Sandbox、Cryptovoxels」
「仮想不動産」を取引できるDappsゲームの上位3つに挙げられたDecentraland、The Sandbox、Cryptovoxelsは、いずれも自分で仮想空間をつくったり、その仮想空間内にオブジェクトを配置したりできるという意味で、マインクラフトに似たゲームである。
だが、マインクラフトとは違い「仮想不動産」を売買することができる。2月11日には、The Sandboxで6000以上の「仮想不動産」のプレセールが開始し、わずか20分で半数近くが売り切れ、2月17日には完売となった。合計で800ETH以上を売り上げたことになる。日本円にして2000万円を超える額だ。
「しょせんはゲーム」と考える人にとっては信じられないだろうが、しかし、それらの「仮想不動産」がたとえば「貸しマンション」として機能したり、「工場」として機能しはじめたらどうだろうか。
あるいは有名デザイナーが手がけたNFTとしての「仮想不動産」というケースを考えてみてほしい。その「仮想不動産」には、たしかにデザイナーの意匠が込められているのであり、しかも、それは世界にたった1つしかない「データ」なのである。
冒頭の1億円という額も、空虚な数字ではないように思えてこないだろうか。
仮想空間で植民地化がはじまっている?
Dappsゲームの世界では、「仮想不動産」以外にも、アバターや武器、キャラクターなど、さまざまなデータがNFT化されて資産化されている。それらの多くは、熱心なゲーマーや投資家によって買い占められており、すでにセカンダリーマーケットでの流通がはじまっている——彼らは「仮想不動産」の世界に住むつもりなのだろうか。
「仮想不動産」に我々が「住む」といわれても、流石にまだ現実感が湧いてこないだろう。しかし、データを買って、データを消費するという生活はすでに我々が日常的に実践していることである。LINEスタンプなどはその最たるものかもしれない。
いままで、こういったデジタルの消費物には、セカンダリーマーケットというものが存在しえなかった。しかし、これからはLINEスタンプのセカンダリーマーケットが生まれるかもしれない。スマホのデータ容量の一部を他人に売ったり、他人から買ったりすることだってできるかもしれない。
このように、おそらく今後は徐々にデジタルコンテンツのセカンダリーマーケットが拡大していくだろう。そしていつか「仮想不動産」を買い、「仮想不動産」に住む。都合が悪くなってきたら「仮想不動産」を売って、次の「仮想不動産」へ……。そんな日がくるのかもしれない。
だが、いまのところ「仮想不動産」を買い占めているのは、ごくごく一部のゲーマーと投資家に限定されている。彼らは、きたる日にそなえて着々と領地を拡大しているのだ。もしかしたら、彼らが「地主」としてバーチャルワールドのなかでふんぞり返っている日がやってくるかもしれない。
Crypto Potatoの記事は次のように締めくくられている。
プレイヤーたちは、平等な利害関係、責任、影響力を獲得するために民主主義の精神によって仮想政府を樹立したいと思うかもしれない。人びとはこれらの世界で生計を立てるためにフルタイムで働くかもしれない。そして、仮想政府は企業を保護しようとするかもしれない。
仮想不動産のパイオニアたちは最後のフロンティア——ブロックチェーン——を植民地化しているのだ。