資本主義社会を全力で駆け抜ける:株式会社Popshoot 大山敏浩

安廣 哲秀

暗号資産・ブロックチェーンの登場により脱・資本主義という考えが世間で一層広まる中、今の資本主義社会を全力で謳歌している若手起業家がいる。株式会社Popshootで代表取締役を務める大山敏浩氏だ。2018年にForbes 30 UNDER 30 JAPANにも選ばれた大山氏は「お金は僕の人生の全て」であると言う。そんな大山氏がなぜ暗号資産・ブロックチェーン事業を始めたのか、大山氏が描く資本主義の未来を読み解く。

1991年、京都府出身。同志社大学卒業。在学中に3人で同社を共同創業。割り勘アプリ「よろペイ」を開発・運営した後、現在は暗号資産ウォレット「WeiWallet」やビットコインの価格予想アプリ「ぴたコイン」、Dapps開発支援ツール「getho」の開発を手掛ける。2018 Forbes 30 UNDER 30 JAPAN選出。

稼ぎ方を知っていれば企業で我慢してまで働こうとは誰も思わない

大山氏の経営者としての原点はどこにあるのだろうか。それは中学高校生の頃に夢中になったオンラインRPGゲームであるメイプルストーリーにあった。大山氏は、ゲーム内での通貨・アイテムのやり取りや実際のお金が絡むリアルマネートレードを通じて、若くしてお金の稼ぎ方を学んだという。

デジタル化が進んだ今の世の中にはお金を稼ぐ方法がたくさんあるにもかかわらず、多くの人はその方法を一つも知らないのが現状だ。大きな会社に勤めている人ほど、会社の全体像が把握しづらく、目の前の仕事に近視眼的になってしまうため、その傾向が顕著である。仕事がつまらない、やりがいを感じないなどと言う人たちが増えているのは、このような時代の変化に起因する部分もあるだろう。大山氏は「彼らはお金の稼ぎ方を知らないだけ。お金の稼ぎ方を一つでも知っていれば不満のある企業で我慢してまで働こうとは誰も思わない。」と語った。

大山氏は、より効果的な稼ぎ方は何かと常に考えている。少しの工夫が売上の額に現れ、その積み重ねによってそれが膨大に膨れ上がっていく。このお金儲けという明確な結果が楽しいという感覚は、オンラインゲームの頃から今現在まで何も変わっていないようだ。

資本主義に生きる以上お金を持たないことには何も始まらない

幼い頃からお金に対する意識はあったのか、と問いかけたところ大山氏は一寸の迷いなく「お金はずっと大事だった」と答えた。家業の関係でお金に触れる機会が多かった大山氏は、『ある意味世の中金だな』と思うことが少なくなかった。

「世の中で当たり前のことを言葉にできない人は信用できない」と大山氏は言う。お金持ちになりたいかと聞かれて、なりたくないと答える人はまさかいないだろう。誰もがお金は欲しいはずである。しかし、なぜかそれを口にできない人も少なくない。お金=手段ときれいごとを言う人がいるが、資本主義に生きる以上お金を持たないことには何も始まらないのだ。

「特に若い時にお金は必要である」と大山氏は言う。自分の能力を覚醒させる為にはお金が必要不可欠だ。いわゆる自己投資という言葉になるだろうが、確かに歳をとってから自己研鑽に励んだり、ブランド服を着たり、高級車に乗ったりしても、費用対効果は若い頃に比べて圧倒的に低くなる。レバレッジを掛けるなら早い方がいいのだ。「例えば、お金を理由に人からモテることも決して悪いことではない」と大山氏は語る。お金がないことで機会を逃してしまう方が損失は大きいということだ。

起業してわかったのは事業が投資家至上主義であるということ

おそらくどの起業家も行き着くであろう命題がある。エグジットを目的に事業をするのか、あるいは、事業を大きくし続けることを目的とするのか。大山氏はこの命題を常に考え続けている。

お金を目的とした場合、一生資本家(投資家)の奴隷としてお金に捕らわれた生活をしなければならない後者の選択肢はナンセンスだ。「このような投資家至上主義の世界では、投資家になることを目指すのが正解のように思える」と大山氏は語った。

だけれども、社会に貢献する事業家たちを一笑に付すことはどうしてもできない。「自分がなにをしたいかは、その時になってみないとわからない。」そう言う大山氏は、今、事業の拡大に全力を注いでいる。

寄付という行為が価値を持つ社会システム

お金重視の社会システムから脱する未来はあるのか。資本主義ではお金を生むことが正義であり、お金が世の中をドライブしている。テクノロジーが発展することで、お金のデータ化が進み、お金の物量感は薄まってきている。また、ブロックチェーンによるトークンエコノミーが形成されるようになれば、お金だけでなく、何か別の基準で信用スコアリングを行うことが可能となる。お金は単なるデータの一種となり、お金の残高がマイナスであったとしても、他の価値基準(トークン)を加味すれば総資産はプラスになる、そんな世界が実現してもおかしくはない。「そこではPLが永久に赤字のビジネスが成り立っているのだろう。」

もしかしたらその兆候はすでに見え始めているのかもしれない。トークンエコノミーやクラウドファンディングなどは、所謂ビジネスと比較して寄付の性質が強い。大山氏はこの寄付の概念が今後強まっていくのではないかと指摘している。特に、富裕層がお金をばらまく行為が増えてくると考えているようだ。賛否両論はあったが、ZOZOTOWNの前澤社長の1億円お年玉キャンペーンもその類と言えるだろう。

「仮に無限にお金があるなら学習機会に恵まれていない子どもをNASAに送りたい」そう大山氏は語っていた。今は単なる寄付としか捉えることができないその行為が、マーケティングや投資という文脈以外に、大きな価値であると認識される日がくるのかもしれない。

ブロックチェーンを意識させないアプリ、「ぴたコイン」

株式会社Popshootが開発を進めるサービスの一つにビットコインの価格予想アプリ「ぴたコイン」がある。翌日のビットコイン価格が上がるか下がるかを予想し、当たれば少額のビットコインがユーザーに付与されるというシンプルなサービスだ。現在デイリーのアクティブユーザー数は約2万人に達し人気を集めている。

大山氏は「ぴたコインがみんなの気休めになれば良い」と語る。ぴたコインは暗号資産・ブロックチェーンに関するアプリ、というよりも簡単なゲームアプリとしての性質の方が強い。たしかに、少額のビットコインをきっかけに暗号資産やブロックチェーンの勉強を始める人もいるが、そのような啓蒙活動としてのぴたコインはあくまでも補助的なものだ。

大山氏は、ぴたコインの開発・運営を通して、やはり世間の人は今でもビットコインの価格、つまりお金に興味があることを学んだという。そして、大山氏はブロックチェーンに対する見解も付け加えた。「ブロックチェーンのような革新的な技術が生まれたとしても、結局今の世の中の経済活動を加速していくのはお金だ」と。

暗号資産・ブロックチェーンは金融市場に吸収されていく

「結局はビットコインだけが革命」大山氏が話した言葉である。確かに、ビットコインは一切の中央管理体無しに経済圏が回る唯一の暗号資産であり、将来USDに並ぶ基軸通貨になる可能性を秘めている。しかし、その他の暗号資産については完全な分散化を成しえていない状況だ。

大山氏は「暗号資産・ブロックチェーンは金融市場に吸収されていく」と語る。暗号資産で言えば、STO分野の発展が期待されており、今後暗号資産の投資的側面が強まっていくと考えられる。ブロックチェーンに関して言えば、そもそも分散型が望ましい領域が少なく、中央集権の方が信頼できる領域の方がまだまだ多い。

「分散型にしろ中央集権にしろ利益が出なければ何の意味もなく、そのバランスが何より重要だ」この暗号資産・ブロックチェーンに対する考えを見てもわかる通り、大山氏はやはり利益至上主義者だ。

どんなビジネスをしていても結局は利益を出している人が正解

最後に、起業家として暗号資産・ブロックチェーン業界をどのように盛り上げていきたいかを聞くと「どんなビジネスをしていても結局は利益を出している人が正解」と大山氏は語った。業界ではビットコイン価格低迷によりどの企業もマネタイズに苦しむ中、株式会社Popshootは利益を出すだけでなく伸ばし続けている。

大山氏は、スマートニュースや割り勘アプリといった別事業にも挑戦する中で、暗号資産・ブロックチェーン業界にビジネスチャンスを見出して業界参入を決意した。「中長期的にどうなるかはわからないが、短期的にはまだその機会は大きい」と大山氏は語る。そう思っていなければ大山氏はこの業界にいないだろう。

“大山敏浩”という人間は、社会の変化の兆しを捉えながらも、今の資本主義社会を全力で駆け抜けている起業家だ。徹底した利益至上主義者が今後暗号資産・ブロックチェーン業界にどのような衝撃を与えるのか。株式会社Popshootの活動から目が離せない。

※ 本インタビューは、2019年3月に実施しました。

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