ビットコインSV、なぜ143%超の暴騰?背後にサトシ・ナカモトを自称する人物

島田 理貴

CoinMarketCap(コインマーケットキャップ)のデータによると、Bitcoin SV(ビットコインSV・BSV)は1月14日に一時441.20USDの値をつけ、終値は前日比で143%プラスとなった(UTC時間)。時価総額ランキングでは4位に浮上している。BSVは1月10日に、前日比で45%のプラスを記録したばかりである。1月5日から1月14日の10日間の終値比較では381%のプラスとなり、その驚異的な上昇に市場関係者は戸惑いをみせている。

これらの急騰の要因は明らかになっていない。

米・Cointelegraph(コインテレグラフ)は、Bitcoin(ビットコイン・BTC)の生みの親である謎の人物・Satoshi Nakamoto(サトシ・ナカモト)を自称するCraig Wright(クレイグ・ライト)氏が係争中の裁判に展開があったことを報じている

Wright氏は、Calvin Ayre(カルビン・エア)氏と共にBitcoin Cash(ビットコインキャッシュ・BCH)のハードフォークを主導した人物として知られる。BSVはこのハードフォークで生じた暗号資産であり、ハードフォーク後もWright氏はBSVコミュニティの中心人物である。

そのWright氏は、元ビジネスパートナーの故Dave Kleiman(デイブ・クレイマン)氏と共同所有していた約110万BTC(執筆時のレート換算で約1兆円)を奪おうとしたとして、Kleiman氏の遺族から訴えられていた。

昨年8月にはフロリダ州の裁判所がWright氏の証言を虚偽としてしりぞけ、Kleiman氏に約110万BTCの50%の権利をもつことを認めたと、傍聴者がTwitterで報告した。しかし、1月14日に公開された裁判所の文書によると、資産の一部の隠し場所であるTulip Trust(チューリップ・トラスト)とよばれるファンドにアクセスするために必要な情報と鍵の一片をWright氏が裁判所に提供したという。

このTulip Trustが裁判において重要である理由は、そのファンドが、Satoshi Nakamotoの財産とされてきた「不動の財産」と規模を同じくするからである。この財産が築かれたのは、BTCの黎明期であるが、マイニングマシンの能力も比較的低いこの時期に、これだけの規模の採掘ができたのは、Satoshi Nakamoto以外にいないだろう、というのが通説だ。

したがって、もし、本当にその鍵が本物であるならば、Wright氏の「私こそはSatoshi Nakamotoである」という主張は真実に近づく。そうなれば、BSVは権威づけられ、現在のBTCの時価総額に逼迫してもおかしくはない。実際に、この情報開示の直後にBSVは急騰している。

だが、米国・CCN.comの記事によると、まだ鍵は「配達予定」であるという。したがって「風説の流布」である可能性は拭えず、冷静な視点からの市場動向の観察が急務だろう。

もとより、Wright氏は業界の「お騒がせ」として有名な人物である。彼は自らを名誉棄損するものを片っ端から訴訟し、これに業界が反発し、BSVの「上場廃止運動」にまで発展した。この運動で、Binance(バイナンス)、Kraken(クラーケン)といった大手暗号資産取引所がBSVの上場廃止を実施した他、暗号資産ウォレットを提供するBlockchain.comがBSVのサポートを終了するなど、業界内で混乱が生じた。

Wright氏は、来月初旬までにこの鍵を「配達」できなければ、なんらかの形での制裁が確定する。直近1か月が、投資家にとってもWright氏にとっても天国と地獄の分岐点になるだろう。

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