SECと裁判中のテレグラムがホワイトペーパーを公開:業務停止命令を振り切る形に

島田 理貴

テレグラムのイメージ

非営利団体Telegram Messenger(テレグラム・メッセンジャー、以下テレグラム)の共同設立者兼CEOのNikolai Durov氏は、2月3日にTON(Telegram Open Network)ブロックチェーンのコンセンサスアルゴリズムに関するホワイトペーパーを公開した

テレグラムとSECの対立は激化?

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テレグラムは、17億ドル規模のICOで先行販売されたGramCoin(以下、GRAM)が「未登録証券」にあたるかどうかという争点で米国証券取引委員会(以下、SEC)を相手方とした裁判の被告となっている。

昨年2月には、GRAMの提供停止と、業務の一時的な停止命令をSECより勧告されており、今回の発表は、これらのSECによる措置を振り切る形となった。

昨年10月には、投資家に宛てたメール上で、GRAMの提供開始を今年4月まで延期することを発表するなど、テレグラムはあくまでも法的プロセスを経て、GRAMの提供やTONの開発を再開する構えをみせていた。

だが、今年1月には、ICOで調達した資金の調達額、資金源、使途といった財務状況に関する、ニューヨーク州南部地方裁判所からの証言・文書の提供命令を拒否するなど、最近は態度を硬化させている。

SEC側は、テレグラムがGRAMが証券ではなく商品であることを証明できれば、申し立ては無効にできると主張しているが、他方、テレグラムは「Gramが証券であることを技術的に証明するのはSECの役割であって、被告の役割ではない」と主張し、裁判は平行線を辿っている。

テレグラムはSECの推測を全面的に否定

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今年1月に入って、SECは核心に踏み込む発言をした。その趣旨は、Durov氏がテレグラムがSNSサービスを提供するために購入したサーバーの運用費を支払うために資金を必要としており、それを調達するためにICOを実施したというものである。

つまり、あくまでも金銭的な動機によってのみICOが実施されたというのである。

だが、Durov氏は、PoS(Proof-of-Staking)を採用しているTONブロックチェーンが安全に作動するのに必要なだけのトークンを発行することこそがICOの目的であったと反論している

ICOに参加した投資家のなかに、バリデーターになることを希望したものがいたかどうかも裁判においては重要な争点になるが、この点についても、Durov氏は、潜在的にバリデーターになることを希望する人たちのうちの十数名から、バリデーターに関する問い合わせを受けていたと反論している

また、実際にサーバーなどのために資金が注入されたことは認めたものの、それは外部環境の影響によってテレグラムの収益能力が低下していることや、TONブロックチェーンの開発にリソースを割かなければならなかったことが原因であり、最初から予定されていたことではないことを強調した

ホワイトペーパーの内容

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今回テレグラムが公開したホワイトペーパーは、TONブロックチェーンのコンセンサスアルゴリズムに関するもので、当初のロードマップでは昨年10月にリリースされる予定であった。

すでに稼働しているテストネットの仕様と大きく変更はなく、TONブロックチェーンにおけるブロックの生成と検証に最適化されたBFT(Byzantine Fault Tolerant)プロトコルについて、計39ページにわたって論じられている。

論文から裁判との関係で重要だと思われる部分だけ抽出すると、世界中に分散された最大300のノードが参加した昨年12月のテストにおいては「一部のノードが不正な動作をしていたとしても、300ノードで6秒、100ノードで4~5秒もの速度でブロックのコンセンサスが達成された」という。

このテスト結果は、TONブロックチェーンが当初の計画通りの性能が実現していることををしめしている。SECは、かねてよりTONブロックチェーンの性能を疑っていたため、このホワイトペーパーをSECへの回答としてとらえることも可能だろう。

筆者にはこの論文を読み解く能力がないため、この回答の正誤を明示することはできないが、それが正しかろうと虚偽であろうと、SECが、このDurov氏のこの行動を愉快に感じることはないだろう。

テレグラムも出席する予定の公聴会は2月18~19日となっている。それまでにSECやDurov氏がどのようなアクションを起こすか注目が集まる。

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