ブロックチェーンを活用したスマホアプリ5選!ゲームだけじゃない!

島田 理貴

スマホのイメージ

Defiやゲームといった領域でDappsが興隆しているが、それらはいくらか複雑で、ブロックチェーンや暗号資産に慣れ親しんでいないと、理解するのはそれほど簡単ではない。

スマホで簡単にブロックチェーンの世界に触れることができるようなアプリを探し求めている人も多いのではないだろうか。

そこで今回は、ブロックチェーンを活用したスマホアプリを5つピックアップしてみよう。

VINchain App:中古車ディーラーの不正を暴く

中古車のイメージ
多くのドライバーは中古車を購入しようというとき、ひどく神経を尖らせてはいないだろうか。カタログに乗っている走行距離は真実なのだろうか、中古車情報サイトに書かれている損耗具合は本当だろうか、相場より安いこの車が盗難車だったらどうしよう……。

こういった悩みを解決するのがVINchainである。VINchainは耐改ざん性に長けたブロックチェーン上に、政府機関、製造会社、保険会社、ディーラー、カーオーナーといったあらゆる方面から収集した詳細な車両情報を記録している。

正確な走行距離、以前の所有者、メンテナンス履歴、さらにはディーラーが隠していた損傷部分の写真や交通事故の記録……。

これらすべてが、改ざん不可能な形でブロックチェーン上に記録され、「VIN Number」とよばれる車両識別番号に紐づけられる。ユーザーは、この番号をスマホアプリやWebページに入力すると、上記のあらゆる車両情報が記載されたレポートを入手できるのである。

それだけではない。専用の自己診断デバイスを車両に装着することで、不具合が発見されたときや、車がレッカーで運ばれようとしているとき、オイルの交換時期が近づいているときに、通知がくるようになる。さらに、適切なタイミングで提携企業からのリペアの割引や、高価買取クーポンといったオファリングを受けることも可能だ。

また、VINchainは、同ブロックチェーン上で「VINchain Token」を発行しており、ドライバーは車両情報などを提供することで、資産価値のあるトークンを入手できる。

ディーラーにとっても、VINchainのエコシステムに参画することでさまざまな利益を得ることができるだろう。VINchainの公式サイトにはいくつかのメリットが列挙されている。

サービスの予約率:27%増
修理注文:19%増
顧客の待ち時間:最大60%短縮
顧客満足度:16%増

あるいは、保険会社やレンタカー業者などにとっても交通事故の検証や、盗難車の追跡といったいくつかの業務で、自動化や正確なデータの入手といった恩恵を受けることができるだろう。

FiFiC:歩けば歩くほど健康になってコインも貰える

歩く人のイメージ

人はなんのために歩くのだろうか。歩くのが健康にいいことは誰でも知っている。健康がどれほど重要なことかはナマケモノでも知っている。

だが、人間はナマケモノ並みに行動に移すことができない残念な生き物だ。歩くためにいつだって「健康以外の」理由を求めてしまう。魅力的なボディ、絶景、タイム、瞑想、運送……。

もちろん、それらはとても自然なことだ。人は歩くために健康が必要であり、健康であるために歩かなければいけないのだ。

では、この関係性と同様に、金を稼ぐために歩き、歩くから金を稼ぐことができたらどうだろう。やる気が湧いてきたのではないだろうか。

FiFiCは乱暴にいってしまえばそういうアプリだ。地図と万歩計とブロックチェーンをくみあわせて、この関係性を実現する。

難しいことなど1つもない。ユーザーはただひたすらに歩けばいい。ある歩数を超えると、NEMプロトコル(≒ブロックチェーン)におけるモザイクとして発行された「FiFiCコイン」が手にはいる。また、地図上にはさまざまな「トークンスポット」があり、そこにたどり着けば、またコインを手にいれることができる。

要は路上に小銭が落ちていて、その落とし物の連鎖を辿っていくらか歩いていれば、お金は手にはいるし、なによりも健康が手にはいるというわけだ。

筆者はいつも腕にXiaomi製のスマートウォッチを巻いているが、結局なんのインセンティブもないため、あまり歩数を増やそうという気持ちにならない。もしかすると、こういうアプリを利用することで、少しは歩こうという意志が芽生えるかもしれない。

YOKANE TENJIN:「よかね」の気持ちがトークン化される

いいねのイメージ
次に紹介するアプリは残念ながら福岡市天神地域でしか利用できない。だが、同様の発想はきっとどんな地域でも通用すると思われるため紹介しよう。

近年、チラホラと「チェックインアプリ」が流行ってきている。チェックインアプリを利用すると、店舗へ来店したときにアプリ経由でポイントが貯まったり、SNSで周知できたりする。

上に挙げたFiFiCもチェックインアプリの一種といえるし、「Pokemon GO」のようなゲームもその応用といえる。そして、この「YOKANE TENJIN」もチェックイン機能の応用例の1つだ。

YOKANEアプリをインストールしたら、まずは天神地域でさまざまな体験をするといいだろう。仮に、天神地下街で買い物をしたあと、櫛田神社へお参りにいったとする。

天神地下街にある加盟店舗に設置されたQRコードを読みとると、ブロックチェーン上に発行された「YOKANEトークン(後述)」が付与される(なお、本稿で挙げるスポットがYOKANE TENJINに対応しているかは未確認だが、公式HPによると約1000店舗で可能とのこと)。

天神地下街を十分に満喫したら、次は櫛田神社へお参りにいく。仮に、神詣のあとに、気をもんでいた友人の病が完治した知らせを受けたとしよう。そうしたら、この体験をアプリのSNS機能から投稿する。

誰かがその投稿に共感した場合、普通のSNSであれば、ただハートマークなり親指を立てたマークなりを押して「いいね」すればいい。

だがこのアプリの場合は、「よかね」すなわち「いいね」をするのにYOKANEトークンが必要になるのである。「よかね」が集まれば集まるほど、YOKANEトークンを獲得することができて、また、今度はその集めたYOKANEトークンをつかって人に共感や感謝を「よかね」をつうじて表現することができるのである。

「Yahoo!知恵袋」でいう「知恵コイン」のようなものといったほうがわかりやすい読者もいるかもしれない。

また、より密度の濃い体験を投稿するときには、より共感を集める(=YOKANEトークンを集める)ために、自分の投稿にYOKANEトークンを付与することで、SNS内で自分の投稿を目立たせることができる。

なお、公式HPをみる限りではYOKANEトークンに他の使い道はない。したがって、このアプリの狙いが、地域コミュニティの活性化と、感謝・共感による独立したエコノミーの形成に当てられているといえるのではないか。

一見、不便なしくみにみえなくもないが、こういったひと手間が、共感や感謝、地域愛といったものの輪郭を際立たせるということもあるだろう。天神地域にお住いの方は、ぜひともこのエコノミーに参加してみてほしい。

Block Record:弁護士が開発した事実を記録することに特化したアプリ

記録のイメージ
もしも、あなたが事件に巻き込まれて、その証拠としてLINEのスクリーンショットを裁判所に提出したとしよう。その画像データが捏造されたものであるかどうかをどうすれば証明できるのだろうか。

近年では、機械学習技術や合成技術の進歩によって、本物と区別できないような偽物の合成動画「ディープフェイク」を目にする機会も増えてきている。

根本的な問題は、デジタルデータが改ざん可能であるということにある。しかし、Block Recordを利用すれば、改ざんできない形で、すなわち「証拠」として十分な水準で、データを記録することができる。

かつては、証拠を証拠とするために、つまり根拠とするデータを証明可能だというために、公証役場や民間の公証サービスを利用することが普通であった。しかしこれからは、アプリ1つで事実上の公証が可能になるかもしれない。

Block Recordは、まず耐改ざん性に優れたブロックチェーンにデータのハッシュ値を記録することで、改ざん不可能なタイムスタンプを付与する。つまり、いつそのデータがブロックチェーンに記録されたのかが公証されるのである。

次に、投稿内容やユーザー名、タイムスタンプが記載された電子証明書が発行される。これも当然改ざん不可能だ。このとき記載されるユーザー名も、アプリ上でKYC(本人確認)をおこなうことで、改ざん不可能な形で個人とユーザー名が結びついているため、証拠として不足はない。

さらに、プライバシーへの配慮もある。たとえば、セクシャル・ハラスメントの被害にあった場合に、その音声データや映像データを第三者が閲覧可能だとなれば、抵抗があるだろう。しかし、Block Recordではデータのハッシュ値のみをブロックチェーンに記録しているため、データ本体は秘匿される。

このアプリは弁護士が作成しているため、裁判におけるユースケースばかりが目立つが、公式HPには、友人との記念写真や、我が子の成長記録、運動の記録といった「思い出の記録」もユースケースとして挙げられている。

なお、このアプリは現在ベータテスト段階にあり、Ethereum(イーサリアム)のテストネットに接続されているため、データの永続性は保障されていない。

また、アプリ内にウォレット機能も統合されてはいるものの、テストネットで稼働しているため、このアドレスにETHを送金した場合には、サポートへ連絡してリカバリー作業を依頼しなければならない。この点には注意していただきたい。

KCKC(キクシー):スニーカー市場から模造品を排除する

スニーカーのイメージ
狙っていたスニーカーが異様なほど安く転売されているのを見かけた際、安値に釣られてついそれを購入してしまった経験はあるだろうか? 近年のスニーカーブームにおいては、CtoCマーケットの拡大もあって、このような経験をした人は増加傾向にあるように思われる。

そのなかで、キクシーは既存の転売プラットフォーム機能に加えて、スニーカーの真贋鑑定とその証明を提供する。つまり、キクシーで偽物をつかまされることはないということだ。

スニーカーはあくまでも量産品だ。同じモデルのスニーカーであれば、精巧に偽造が可能であるようにも思われる。しかし、スニーカーは同一モデルであっても、それぞれに固有の特徴がある。たとえば、重さや色、形といった部分に微妙な差がある。

ゆえに、これらの情報を取得して、ブロックチェーン上に記録してしまえば、上で紹介したBlock Recordと同じく、そのスニーカーは本物であると「公証」される。

Block Recordと違うのは、スニーカーには買い手も売り手もいるということだ。買い手からすれば、たとえ公証されていたとしても、届くのは実体としてスニーカーであるため、どこかですげ替えられている可能性が否定できない。売り手からしても、あとになって偽物ではないかと吹っ掛けられても困るだろう。

だから、キクシーはブロックチェーンに記録されたデータへのリンクを書き込んだRFIDタグをスニーカーにアタッチしている。届けられたスニーカーが本物かどうかはRFIDタグを読み込むことで、識別可能となっているのだ。

ちなみに、真贋鑑定はキクシーが雇っている鑑定士による検品や、キクシーが保有する本物のスニーカーとの比較、データベースとの照合によっておこなわれる。

この一連のしくみによって、買い手は安心して買い物ができるだろう。また、売り手にとっても難癖をつけられるリスクを回避できるし、また、価格の適正化も期待できるだろう。

おわりに

ウォレットのイメージ
ここまで、5つのブロックチェーンを活用したスマホアプリを紹介してきた。ブロックチェーンのさまざまなメリットを、手のひらから享受できるというのは、喜ばしいことだろう。

ただ、注意したいのはブロックチェーンを利用したアプリケーションは、パッケージングされたスマホアプリだけではなく、スマホアプリとして数多くリリースされているウォレットアプリ内で動作するDappsもあるし、ブラウザからアクセスできるものも多いということだ。

ブロックチェーンの本質はP2Pのネットワークである。インターネットそのものをスマホにインストールできないように、ブロックチェーンをスマホにインストールすることもできない。あくまでもブロックチェーンのスマートコントラクトと対話するために、スマホをつかうというだけである。

そうなると、必要なのはウォレット機能であり、ウォレットアプリさえあれば、大抵のブロックチェーンの機能にアクセスできてしまうのである。ここで紹介したアプリも、その本質はウォレット機能にある。

だから、アプリ開発者はウォレットとなにをくみあわせたら、面白いかを考えてみるといいだろうし、ユーザーとしても、まずウォレットをインストールして、ブロックチェーンが一体どのようなものなのかのイメージをつかんでから、これらのアプリを使ってみると、より深い体験を得ることができるだろう。

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